二つの憲法 大日本国憲法と日本国憲法

二つの憲法
大日本国憲法と日本国憲法

井上ひさし 著

 学習会で題材にした本です。

近代日本とともに誕生した明治期の大日本帝国憲法。戦後,その帝国憲法を改正して発布された現在の日本国憲法。この二つの憲法はいかに生まれ、育ち、受けとめられ、議論されてきたのか。何が変わり、また変わらなかったのか。そもそも憲法って何なんだろうか。九条の会呼びかけ人の一人、作家井上ひさしがやさしく語る、日本の憲法今むかし。

■著者からのメッセージ

 20世紀は、戦争の世紀でもありました。2つも世界大戦があり、大虐殺があり、核兵器までもが使用された悲惨な世紀でした。

 しかし一方では,20世紀になって初めて国際法で植民地制度が否定されました。拷問も国際法で禁止されました。表立って拷問をやっている国はありません。それから、男女同権。女性の選挙権も20世紀から始まっています。奴隷制度もなくなりました。

 そういう意味では、さまざまに前進もしています。この前進する瞬間をとらえて、それを人類の共通の宝物として、新しい憲法に取り込もうというのは人類の智恵です。

 第二次世界大戦後にできた「日本国憲法」は、「戦争はいやだ。不幸なことばかりだ。これからは平和に向かって、地球上の全人類が戦争をしないで生きていこう」という気持ちが高まっていたときに生まれたものです。その前進の瞬間にできたということを忘れてはいけないのではないか。ですから、わたしは「日本国憲法」は世界史からの贈物であり、しかも最高の傑作だと信じています。人類はある一面では少しずつは進んできている。それに賭けようではないかというのが、わたしの個人的な決意です。(略)

 21世紀に、たとえば核問題を「日本国憲法」で解決する。そのことでわたしたちは人類史に貢献できるのではないでしょうか。

(「4 日本国憲法ができるまで」より)

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